【企業分析】9672東京都競馬/SPAT4で地方競馬を牛耳る

企業分析

東京都競馬は大井競馬場の大家であり、地方競馬のインターネット投票システム「SPAT4」の運営管理による賃料収入が主力の会社です。SPAT4は地方競馬のインターネット投票のシェアのトップであり、収益力の高さと成長性を兼ね備えた会社です。

大井競馬は地方競馬でのシェアNo.1(売得金ベース)で、大井競馬と年末の東京大賞典は競馬をしない私も知っている知名度があります。その会社が全地方競馬を網羅するインターネット投票システムを運営するというのが同社の強みで、要するに有力な競合のインターネット投票システムが出てきた場合、その競合システムに大井競馬に投票できないようにしてしまうことで、競合システムの人気・シェアを拡大を阻止することができます。平たく言うと、参入障壁が非常に高い、強固なビジネスモデルを有することが同社の強みです。その結果が、以下の業績推移、収益性の高さです。

出典:マネックス証券
出典:マネックス証券
出典:株探

地方競馬の概況/東京都競馬を取り巻く環境

事業環境は非常に追い風です。地方競馬の入場者数は平成以降右肩下がりでしたが、売得金は平成25年以降反転し、年々伸び続けています。その伸びを牽引するのがインターネット投票で、インターネット投票システムで1位のシェアが東京都競馬のSPAT4です。なお、大井競馬自体が地方競馬の売得金の約15%を占める最大の地方競馬になります。

娯楽やレジャーという近年の投資の長期テーマにもピタリと当てはまります。世の中の効率化が進み、人が働かなくなると、その余った時間とお金をどこに使うか?そりゃギャンブルでしょ!?と書くと批判されそうですが、、

出典:競馬:農林水産省 (maff.go.jp)
出典:東京都競馬 2021/12期 決算説明会資料より

SPAT4の市場シェアと他の投票システムの比較

SPAT4のシェアに関して、地方競馬全体の馬券売り上げのうち45%がSPAT4によるものです。大井競馬に関しては、馬券売上高の4.5%を歩合賃料として東京都競馬が徴収する契約になっていますが、他の競馬場運営者からもSPAT4での売上高の一定割合を徴収することになるはずです。

出典:東京都競馬 2021/12期 決算説明会資料

SPAT4がインターネット投票システムの半分のシェアを握ることはわかりましたが、他のインターネット投票システムには何があるのでしょうか?
投資家向けの情報サイトではなく、地方競馬をする人向けにインターネット投票システムの比較をしている情報サイトはいくつかあり、それらサイトを見ると競合となるシステムは概ね、「即パット」「オッズパーク」「楽天競馬」の3つでした。

出典:地方競馬のインターネット投票サイト4つを徹底比較!おすすめは? | 競馬情報サイト (keibainfo.jp)

即パットはJRA中央競馬が運営するシステムですが、一部の地方競馬が対象外だそうです。やっぱりJRAからすると、競馬をする人の限られたお金はJRAで使ってほしいと思うはずですし、地方競馬はあまり力を入れないでしょう(中央競馬vs地方競馬という競合関係にもある)。オッズパークに関しては、大井競馬を含む南関東4場の投票ができないというのが致命的に欠点です(地方競馬の馬券売上高約1兆円のうち約4,000億円が南関東4場です)。楽天競馬に関しては次のセクションで少し掘り下げて確認します。

楽天競馬との関係(仮説)

楽天競馬が最大の競合になりそうで、楽天競馬とSPAT4を比較する情報サイトも多くありました。楽天競馬は楽天銀行からしか入金できないというのが利用者からするとデメリットのようですが、その点を除けば評判は良さそうな印象です。楽天の経済圏ビジネスモデルを考えれば、競馬をする人に楽天銀行に口座開設してもらって経済圏で顧客を囲っていくことを主眼にしたサービスだと思いますので、楽天競馬を中心に対応銀行口座を増やしていくということはあまり考えられません。

楽天競馬に関しては、以下の楽天のプレスリリースも気になりました。楽天競馬の投票システムはSPAT4を利用しているという2014年の記事です。今も同じかはわかりませんが、実は楽天競馬の収益の一部も東京都競馬に入っているとすると、地方競馬の収益を総どりできる立場にあることになります。

「楽天競馬」サイトがリニューアル!!「SPAT4」と総合プラットフォームを共用:お知らせ&ニュース:楽天競馬
 地方競馬全場のインターネットサービス、「楽天競馬」が本年3月にリニューアルしました。従来は、自社開発したシステムで運用されていましたが、南関東4競馬場(大井・…

ちなみに、楽天競馬を運営する競馬モールのバランスシートを官報で見つけましたので貼っておきます。
当期純利益=利益剰余金という謎の純資産(毎期利益の全額を楽天に配当している?)ですが、バランスシートを確認すると固定資産は持っていないようです。システムを抱えていない可能性があり(償却済という可能性もありますが)、地方競馬の運営者から楽天競馬での売上高の一定割合を使用料として受け、そのうち一部をSPAT4利用料という形で東京都競馬に払っているだけのビジネスなのかもしれません。完全に想像ですが。その場合、地方競馬運営者からの未収入金という流動資産と東京都競馬に対する未払金が流動負債がバランスシートに計上され、多額のシステム投資と固定資産勘定は不要になります。何度も言いますが完全に想像です。

出典:官報決算データベース

もしこの仮説が正しければ、地方競馬の大半のシェアを東京都競馬のSPAT4がとっているということになりますね。

公営ギャンブルに関して、同社はESG視点ではどのように考えているのか?

東京都競馬に投資する場合、もう1点考えておかなければならない点があります。

それはESGの観点です。地方競馬は公営とはいえ、ギャンブルです。ギャンブルは依存性も高く、ギャンブルによって人生を狂わせてしまった人も多いことでしょう。

投資の世界では、ESG投資が広がっており、ギャンブルをはじめタバコやアルコールなどの依存性の高い商品やサービスを扱う企業への投資を控える機関投資家も増えてきています。

例に出したタバコやアルコールを例にとると、JT(日本たばこ産業)やキリンHD・アサヒGHDなどは、統合報告書などでこの点をどう考え、将来の事業展開をどうしていくのかをいうことを説明していますが、東京都競馬のそれには、ギャンブルについてどのように考えているのかの記載がありません。将来の事業継続性という意味で避けては通れない点です。確かに、東京都競馬は地方競馬の運営者ではなく、単に競馬場施設と投票システムを貸しているだけです、しかし、本当にそれだけでいいのでしょうか?地方競馬の重要なインフラを支える会社ですから、自社の考え方くらいは明確にしてほしいものです。

出典:S PEOPLE|東京都競馬株式会社 (tokyotokeiba.co.jp)

東京都競馬の今後の業績について

冒頭のマネックス銘柄スカウターの業績推移で、2022/12期の予想利益の成長が鈍化している点は気になりました。
一点気にしておかなければならない点としては、22年度にSPAT4の新システムがリリースされるという点です。これによりどれくらいの売上の積み上げがあるのかわかりませんが、今後5年間は償却費の負担増は確実にありそうです。これだけの投資ができるというのは、やはりビジネスが安定して営業キャッシュが潤沢にあるがゆえにできることなので、やはりこの会社は強いです。

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