自転車用部品世界首位のシマノを取り上げます。
同社は2022/4/26に2022/12期Q1決算を発表し、翌日に株価は大きく売られることになりました。高収益率企業で欲しい会社ではあったものの、これまでPER高く手が出せない会社でした。ここにきて、PERも18倍と割安感も出てきたこともあり、同社の株式価値評価を確認してみたいと思います。


私の結論を先に書くと
シマノはコロナ以降、世界的なサイクリングや釣りといったアウトドア需要の増加により、売上・利益が急伸した会社です。この伸びが続くと見るか、一時的と見るかでバリュエーションは大きく変わります。
健康志向の高まりという世の中の長期潮流をとらえ、サイクリング需要、自転車の需要が続き、業績は伸びていくシナリオも想定されますが、コロナ影響の一時的な需要増に対する反動も十分に考えられますので、この後では主に2つ(派生形も含め3つ)のシナリオを用意し、検討することとしました。
1つ目の21/12期の利益が続くケースでは、30,000円くらいまで株価上昇余地はありそうですが、2つ目のコロナ反動で今後の利益水準が20/12期の利益水準に落ち込むケースでは、企業価値・株主価値は今よりも低く、株価の下落余地はありそうです。
どのシナリオを採用するかで売り買いの判断異なりますが、仮に20,000円を割れてくるまで株価の調整が進む場合は、かなり安全域は大きくなり、そこまで待つという選択肢もありではないかというのが、私の結論になります。
では、それぞれのケースの詳細な計算結果をみていきます。
ベースケースのバリュエーション
ベースケースでは、コンセンサス予想に近い将来計画をベースに試算します。22/12期のコンセンサス営業利益が149,600百万円でしたので、そこから毎期1%ずつ成長させていくシナリオです。

なお、2022/12期の会社予想では、営業利益が161,000百万円ですので、当期以降この水準を達成できる場合は、バリュエーションはさらに高まることになります。
リスクケースのバリュエーション
リスクケースでは、20/12期の営業利益をベースにそこから毎期1%ずつ成長させていくシナリオです。20/12期にすでにコロナ後の特需が乗っていると考えると、これを保守的ととらえるのも、、、という気もしましたが、このシナリオでの理論株価は約19,000円となり、このあたりまで実際株価が落ちてくるとかなり固いのではないかという印象です。
シマノは自転車部品メーカーでの圧倒的シェアを持ち、この領域での競争が脅かされる、そして利益が先細っていく状況というのはあまり想像できません。

市場予測も加味したケースのバリュエーション
3つ目として、こんなのはどうでしょうか。
いったんは特需の反動減で20/12期水準まで営業利益が落ち込むものの、今後数年は自転車業界は高成長が続くと想定するシナリオです。この記事が参考になりました。

バリュエーション上は営業利益を5年間年率7%で成長させ、1,000億円程度の営業利益水準でターミナルバリューを計算しました(表上、売上高は変えてません)。発射台である1期目の利益をどう置くかで評価は変わりうるものの、リスクケースを現実味あるものにするとこのような試算になります。当期の会社見通しは反動はまだこないですが、いずれ来るとの想定の下、それが1年先か2年先かでもバリュエーションにはそれほど大きな影響はないでしょう。

終わりに
シマノはIRが充実しておらず、決算短信と有価証券報告書の法定開示以外の開示はありません。もちろん決算説明会もなければ、中期経営計画の開示もありません。
そのため、企業価値の試算のための情報が少なく、判断が難しいということを感じました。
なお、上で記載したバリュエーションの結果はあくまで私の試算結果であって、これが絶対に正しいものではありません。理論的におかしいところも多々ありその一部はわかってやってるつもりです。その点もご了承のうえで読んでいただければと思います。
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