2021/3/29に野村HDが、米国子会社での顧客との取引から多額の損失が発生する可能性がある旨のプレスリリースを発表しました。
その発表を受けて、株価は先週末比で約20%の下落となりました。
プレスリリースからでは正直将来どうなるかわかりませんわ、ということではあるのですが、直観でちょっと株価が売られすぎな気もしており、経理の視点やIRの視点から、今後の本件の動向を占ってみたいと思います。
野村HDのプレスリリース(2021/3/29)
(以下画面は野村HDのホームページのプレスリリースから抜粋(黄色マーカは筆者追加))

株価の下落と損失見込み額との関係

発表前の先週末3/26終値から本日までで株価は約20%下落し、時価総額で4,500億円が失われたことになります。
一方で、会社のプレスリリースでは損害の見込み額は未定としたうえで、「顧客への請求額」が20億ドルである旨が記載されていました。「請求額」ってどういう意味なのでしょうか?常識的に考えて、顧客に対する債権ととらえるべきなのではないかと思います。とすると、その債権が今後どれだけ当該顧客から回収できるかという、債権の評価(貸倒引当金)の論点になるのだろうと。何が言いたいかというと、それ以上は損失が発生しないのではないか(全額回収できなかったとしても請求額が損失の上限)と考えることができると思います。
IR目線でいうと、今後損失が増える可能性がある場合に、下振れするリスクを背負ってまで20億ドルという数字を出すか??今後増える可能性があるなら、「影響は未定・算定中」で出せばいいじゃないか、また請求するか否かは経営判断であり、20億ドル請求すると決めたのだろうと考えることができのではないか。
仮に、金融業界全体に与える影響がない、野村HDビジネス環境に影響がない、単なるスポットの取引から生じる損失なのであれば、株式価値の算定理論上は、将来CFが2,200億円当期か来期に失われ、それがそのまま企業価値から差し引かれるべきとなるので、4,500億円の株式価値棄損は行き過ぎではないかと予想できました。ただ、取引の全貌がわからず、今後追加の損失が発生しないとも言い切れず(プレスリリースにもその旨書かれている)、市場の評価としては本件のエクスポージャーは4,500億円(本件の損失見込み額)と考えているといくことかもしれませんね。
ギャンブルっぽいので私は手を出す予定はありません。念のため。
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