【企業分析】3543コメダ珈琲/のれんの評価から企業価値がわかる

企業分析

2021/4/14、コメダHDが2020年2月期決算を発表するとともに、2025年度までの5か年の中期経営計画を発表しました。
中期経営計画の中身に関してはそんなに目新しいものはないのですが(失礼)、これを機に同社の有価証券報告書を見ていて、同社の企業価値に関して気付きがありました。それは、同社のバランスシートには多額ののれんが計上されており、そののれんの注記から経営者が考える自社の企業価値がわかるのではないか、要するに今の株価が企業本来の価値と比べて割安なのか割高なのかがわかるのではないかと。本日はそんな内容についてまとめます。

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2021/4/14 中期経営計画の策定に関するお知らせ

普通と違うコメダHDの”のれん”の正体

コメダHDのバランスシートを見た時にまず目につくのは多額の「のれん」です。こののれんの正体に関してはまとめている記事がいくつもありますが、ここでもさらっと触れておきます。
多くの人は「のれん」が企業買収によって生じ、自分の会社が持つブランドなどの無形資産(広義のれん)は自己創設ののれんとして計上が禁止されていると知っています。よって、コメダ珈琲という自らが営む事業でのれんを計上していることに違和感を感じます(自己創設のれんを計上しているように見える)。
実は、今のコメダは創業時のコメダ(旧コメダ)とは全くの別の会社(MBKP3)であり、その会社が旧コメダを買収したことでのれんを計上し、そのMBKP3という会社がコメダに社名変更しただけです。別会社が旧コメダを買収したときにのれんを計上したとわかると、そののれんに違和感はなくなるはずです。ちなみにその会社(MBKP3)が旧コメダを買収する資金は銀行借入で賄っており(LBO:Leveraged Buyout)、今のコメダのバランスシートにはその借入金が計上されています。

なお、上の図は2020年2月期の有価証券報告書の沿革(以下画面ショット)を元に作成しています。

出典:コメダHD有価証券報告書

のれんの注記からわかること:2020年2月期有価証券報告書より

さて、ここからが本題です。コメダは会計基準にIFRSを採用しています。IFRSを採用している理由は多額ののれんを償却しなくてもいいからでしょう。非償却というメリットが大きい反面、その代償も大きく、毎期のれんの減損テストを実施するという実務上の負荷が高い、かつ、その減損テストに関する開示を行わなければなりません。

ここで、そののれんの減損テストの開示を見てみましょう。2つ下の画面は2020年2月期の有価証券報告書の減損テストの注記です。そこを見ると、取締役会で承認された利益計画をもとに、(おそらく)DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)でのれんの価値を計算するとのれんの帳簿価額(383億円)を802億円も上回るということが書かれていました。これはのれんに802億円の含み益が生じていることを示しています。減損テストでののれんの評価額は、まず事業計画からDCFで事業価値を出し、そこから事業資産(運転資本や固定資産)を差引きし、のれんの価値を計算します。その結果ののれんの価値が1,185億円(383+802)ということです。なお、企業価値(事業価値)の算出は後ろに参考として載せておきますので、是非見てください。

802億円の含み益を加味しても、実質PBRが0.85倍なので、やはり株価は相当高いですね。しかもこれはコロナ前の事業計画をもとに算定しされたDCF結果なので、今なら計画がもう少しダウンサイドとなり含み益は減っているはずです。あと1か月くらいすると新しい2021年3月期の有価証券報告書が出るので、そこで含み益がどれだけあるのか確認してみるのもいいかもしれませんね。

出典:コメダHD有価証券報告書

普通の会社ののれんの減損テストにかかる注記は買収した事業についてのみ(自社の営む事業の一部のみ)書かれていますが、コメダの場合はコメダ自体が買収した事業であるということから、本業自体の減損テストの注記となり、知り得る情報が非常に多いことがわかりました。経営者が考える企業価値(のれんの価値1,185億円(簿価383+含み802)に運転資本や固定資産、それから非事業資産を加えて算出できる)や企業のWACC(加重平均資本コスト)も記載されています。
これ、出すことに躊躇はしなかったのかな??IFRSでの要求事項とはいえ、もうちょっとうまく隠している会社も多いはずです。。

参考:コメダHDの企業価値を注記から求めてみた

参考:コメダHDの株価水準(2021/4/17現在)

株価はようやくコロナ前の水準まで戻ってきました。ちなみに、コメダの業種は飲食業ではなく「卸売業」ですね(比較企業が兼松や双日とは、、)。フランチャイジーに豆を売るビジネスだからですが、利益率が低くなりがちな卸売業にあって利益率は異常に高いです。コメダのビジネスモデルはすでに語りつくされているところですが、また今度まとめてみたいと思います。

出典:株探
出典:株探

参考:のれんの注記のIFRS要求事項

出典:IFRSに基づく連結財務諸表の開示例 2016年3月31日 金融庁 P57,58より抜粋

出典:IFRSに基づく連結財務諸表の開示例 2016年3月31日 金融庁
出典:IFRSに基づく連結財務諸表の開示例 2016年3月31日 金融庁

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