先日のカンブリア宮殿を見ました。IKEAは日本法人はもちろん、グローバル本社も非上場会社であり株を買うことはできませんが、同社のビジネスモデルと戦略が参考になったのでまとめておきます。

IKEAの経営戦略
番組では郊外型店舗から都心型店舗へ転換するIKEAの姿を中心に描かれます。
もともとIKEAの戦略は低価格戦略です。その低価格を実現するために、組立や配送のコストを客に転嫁し(転嫁していると言っても、客が楽しんで自分で店舗から持ち帰り、楽しんで組み立てるというように思わせるところが面白い)、低い価格でも利益が出る仕組みを作っています。そのため、必然的に店舗もコストの低い郊外に位置していました。
ところが、世界的に車を持たない人が増え、郊外のお店まで来てくれなくなった。その傾向は日本で顕著だと言います。人々のライフスタイルや経済環境が変化したことで、従来型のビジネスモデルが通用しなくなったというのが、都心型の店舗出店を開始したという経緯になります。

都心型店舗への出店は店舗戦略ではなくマーケティング戦略の一環
都心型の店舗は日本では2020年から出店を開始し、今は原宿・渋谷・新宿の3店舗を構えるそうです。商品構成は低単価の雑貨が中心、家具も都内の若者をターゲットにワンルームなどの狭い部屋用の商品をそろえているそうです。
面白かったのは、大型の家具はその店舗に商品の在庫を抱えていないという点。客はお店で商品を確認し、その場でQRコードからオンラインで注文して配送してもらうというスタイルでした(配送料は客負担)。日本の一等地の店舗は狭いので、そこに在庫はもたないというのはすごく理にかなってます。想像ですが、おそらく倉庫としても機能する郊外型の店舗(船橋)から配送してますな。
都心で家賃が高い点についての質問。若者などの低所得層に低価格でよい商品を届けるために、低コストを武器にするIKEAビジネスモデルに反しないか?という点に対して社長は、今は投資すべきときでその投資は厭わないと語ります。若者の認知が低く、IKEAを知ってもらうことが大事でそのために投資をするということでしょう。原宿は半分以上がIKEAが初めてという顧客だそうです。
都心型店舗は黒字か?との問いに、社長は明確な回答は避けましたが、オンラインでの売上など含めた全体で考えるべきとのコメントしていました。ちょっと話がそれますが、わたくし経理屋の目線だと、会計上は、都市型店舗はあくまでショールームなので資金生成単位(CGU:Cash generating unit)は店舗で1つなのではなく、全社資産などのグルーピングをしていると理解しました。
大転換といいながら、”都心型店舗が増えていくことはない”というのが、これを見た私の感想・仮説です(もし投資対象になるなら、そう判断します)。あくまでショールームなので、大都市の中心に1つというイメージです。なので、都心型店舗を増やして売っていくのではなく、オンライン店舗に誘導し、オンライン店舗で売っていこう思惑があるはずです、オンラインはもともと低コストですね。店舗戦略の転換ではなく、あくまで顧客が郊外型にこなくなった結果、認知度が低下したことに(特に若者)対応するマーケティング戦略ですね。

2014年の従業員の正社員化について
IKEAは2014年に従業員の正社員化に踏み切っています。これもコスト増加を伴う施策ですが、このことについて、社長は離職率が下がったとコメントされてました。人件費はコストは増える一方で、採用コストが下がったり、習熟によるオペレーションの効率化などの含めると全体のコストは下がっているのかもしれませんね。
正社員化したとたんに働かなくなる人がいそうですが、そうならないように、評価や処遇とセットで従業員を正社員に切り替えたのだと思います。ゆうても外資系企業なのでその辺はドライなのかもしれないですね、知らんけど。
おわりに
カンブリア宮殿はたまに見ますが、面白くて勉強にもなりますね。
今回だと、村上龍が急にIKEA日本法人の社長に「ニトリって家具屋は知ってるか」と聞き出したときに社長の顔が笑ってなかったのがひやひやしました。そういえばニトリの似鳥会長にも、島忠買収に関して「DCMが島忠を買った後にDCMごと買えばよかったんじゃないですか?」と聞いてたときもドキドキしました。。。
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