2021年2月末決算会社の本決算の発表が徐々に始まりだしました。
本日2021/4/7の決算発表した会社の中で面白い開示を発見したので、記事にしたいと思います。
その会社の名前は株式会社ディップ。「バイトル」や「はたらこネット」などの求人情報サイトの運営会社です。何に注目したかというと、売上320億円強の規模の会社が有価証券に約100億円投資し1年で57億円も損したということです。
ちなみに、この有価証券売却損57億円の話は投資ネタには何も役に立たない情報ですが、もしディップという会社にこれから投資しようという人がいたら、ディップという会社の経営者がどういうことを考える人で、どういうマインドも持ち主かということは、この記事からわかるはずです。

以下2つの画面はディップの2021年2月期決算短信からの抜粋です(黄色マーカーは筆者がつけました)。


私がこの会社ヤバいなと思ったのが以下の2点です。
- 自社の業績悪化を「景気悪化時に利益が出る設計の有価証券」でヘッジできると思った点
- それを「従業員の雇用を守るためにやった」と言い切る点
1点目に関して、自社の業績の悪化をヘッジするなら、ヘッジの手段としては自社の業績と逆に動く金融商品が必要になります(金融商品でなんとかしようという発想もどうかと思うが)。
買った銘柄がヘッジにたる銘柄だったのかという点も気になりますし、買った時期によってもヘッジになるか否かも決まります。買ったのは上場銘柄だそうですが、2020年3月の時点で株式市場での株価はすでに先行して落ちています。反対に自社の業績が悪くなるのは今後の先の話です。その時期の点でもヘッジになっていません。株価が上がるか下がるかもわからない。それが自社の業績と連動するかもわからない、そんなものでヘッジしようとまじめに役員会で議論していたとしたら相当この会社はヤバいです。誰か止める取締役・監査役はいなかったのかと思います。
次に2点目に関して、従業員の雇用を守るためなら、給与原資となる資金集めに走りませんかね、ふつう。金融機関から融資枠を獲得を目指すとかがあるはずです。というかこの会社はめちゃめちゃCashを持っています。同社の有価証券報告書の従業員の状況に記載のある従業員数と平均給与から算出した給与総額は年間で90億円弱(多く見積もっても100億円)ですが、昨年度末時点で現金が192億円と潤沢です。そのうち57億円も件の投資ですってしまうしまうわけですが、、それを「従業員の雇用を守るために(仕方なく)やったことです」って言い張るところがまたなんとも趣があります。
ちょっと株主になって議事録の閲覧請求をしたい気もしますが、従業員より株主にもめっちゃ怒られそうな案件です。今年の株主総会に出てみたかった。。
ちなみに、本事案に関しては、上の2つ以外にもツッコミどころは満載です。
まず、上の決算短信での当期の経営成績の概況の説明の黄色マーカー部分で「・・有価証券を購入しました。・・・有価証券を売却した結果、・・当期純利益は6億7百万円となりました。」と記載し、意地でも売却損が57億円出ましたと書かない点。本来は「・・有価証券を売却した結果、特別損失として投資有価証券売却損を57億円計上し、・・当期純利益は6億7百万円となりました。」とするのがストレートです。PL本表を見ればわかるとは言え、、なんだかなと感じです。
もう1つ、「詳細は2021年1月27日付「・・・に関するお知らせ」をご覧ください」となっています。私はどの有価証券を買ったんだ?とか、どういう意思決定プロセスを経てこの有価証券を買ったんだ?とか、気になって気になってしかたなく、その詳細が記載されているというお知らせを見に行くわけですが、そこからさらに別資料にリファーされ、その先を見るたびにリファーされ、行き着いた先でも私の欲しい情報は何一つありません。ちなみに、↓こんだけたらいまわしにされます、、
2021.4.7 2021年2月期決算短信〔日本基準〕(連結)
↓
2021.01.27 投資有価証券評価損の戻入及び投資有価証券売却損の計上に関するお知らせ
↓
2020.12.01 特別損失(投資有価証券評価損)および通期業績予想の修正に関するお知らせ
↓
2020.09.01 2021年2月期第2四半期末の有価証券含み損に関するお知らせ
ちなみに、去年の有価証券報告書の金融商品の注記には以下の記載がありましたが、今年の有報ではどんな注記になるんでしょうね。

決算短信は監査法人の監査の対象外ですが、今後の監査の過程で、もしかしたら適切な意思決定プロセスを経ずに有価証券を購入していたとか、内部統制の逸脱があるみたいに大事に発展していくかも、、とか想像は膨らみます(帳簿上は適切に記帳して、ちゃんと決算書を作っていれば、制度上は問題にはならない??)。
【追記】2021/2期の有報が開示されたので、追記します。あずさ監査法人さん、この開示大丈夫ですか??

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