【企業分析】4488 AI inside/AIもOCRもただのツール、顧客のどんな課題を解決するか

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株式市場での2020年の大化け株といえばAI inside社でしょう。2020年は業績も大きく伸び、株価も爆上げでした。そのAI insideが2021/4/28に大口取引先を失うというプレスリリースを発表しました。特定の取引先への依存度が高いと、その取引先を失ったときの影響が甚大ですが、本件はそのリスクが顕在化した形です。

タイトルのとおり、本件の結論は顧客の課題解決ができず解約されたのだと思いますが、自分がビジネスをするうえでも単に製品を売るだけではなく、その製品でお客さんのどんな課題が解決できるのか、というところをしっかり意識して仕事をしたいですね。以下で詳しく本件を振り返ります。

AI inside社 2021/4/28 プレスリリースの内容

2021/4/28 大口販売先ライセンスの不更新見込に関するお知らせ

出典:プレスリリース2021/4/28 大口販売先ライセンスの不更新見込に関するお知らせ
出典:プレスリリース2021/4/28 大口販売先ライセンスの不更新見込に関するお知らせ

大口取引先を失うことでの業績への影響は

以下の画面ショットは同社の2021年3月期Q3の決算説明会資料からの抜粋です。2021年3月期の売上高44億円のうち17億円が今回消失した大口取引先(NTT西日本)向けの売上です。これが2021年度以降になくなるのは大きすぎます。

出典:2021年3⽉期第3四半期 決算説明資料

そしてもっと痛いのは、NTT西が同社との契約を解除した理由です。プレスリリースによると「・・・ユーザの利用シーンにまで踏み込んだご提案をするまでに至ることができず、多くのユーザが「おまかせAI OCR」のライセンスを1年間の最低利用期間を待たずに解約しております・・・」と書かれています。

顧客の課題を解決してお金をもらっていたのではなく、単にAI-OCRという製品を売っていたということでしょうか。はやりものなので、「AI」という言葉だけで売れたのかもしれませんね。ソフトの売り切りビジネスではなく、リカーリングのビジネスなので、顧客が価値を感じなければそりゃあ解約されます。

販売パートナーであるNTT西だけが悪いのではなく、他のパートナー(NTT東、NTT Dataなど)とも同じような態度で売っていたなら、今後も解約が続く可能性があります。
それにしても、販売をパートナーに頼る方式は、顧客との接点がパートナーにある以上、顧客の課題解決をパートナーに依存してしまう点はデメリットですね。同社の有価証券報告書を読んでみると、顧客のユーザー体験を重視する趣旨のことも書かれていますが、自社のコンセプトをパートナーと共有し、パートナーをコントロールしていくことが大事だということは同社の今後だけではなく、同様のビジネスをしている企業にとっても重要な課題でしょう。

ちなみに、上のスライドでチャーンレート(解約率)が0.28%とどや顔で記載されていますが、そりゃ1年間解約できない大口契約が分母に参入されていると、そういう数字になりますな。

バックオフィスで働く身として

AI-OCRに関してはバックオフィス(経理)で働く私も注目している技術です。
ただ、私も一度AI-OCRのデモを見たことがあるのですが、とても実務に耐えうるものではなく、ちょっとがっかりした経験があります。AI-inside社の製品ではないのですが。

なぜがっかりしたか、事前の期待が高すぎたのだとも思いますが、思った以上に読み取りの精度が上がらないんです。。。

経理だとよくあるシチュエーションとして、得意先から届く請求書を紙で受け取って、そこから伝票を会計システムに入力するという作業が生じますが、その請求書をOCRで読み取り、RPAを使って会計システムへのインプットまでを自動化しようという取り組みをします。しかし、そもそも請求書は得意先によってフォーマットがばらばらで、そういう決められていないフォーマットの書類を、今の技術のAI-OCRでは人間のようにうまい具合に読み取ってはくれません。

あと、投資ネタに戻りますが、AI-OCRという技術は永続的に使われる技術ではない、なので、読み取り精度が他社より高いとか同社の強みは企業の持続的な利益にはつながらない、と私は思っています。

なぜなら、OCRは紙を読み取ってデータ化するためのツールですが、初めからデータでやり取りをすれば、わざわざOCRを使わずとも済むからです。先の請求書の例で言うと、請求書を紙でもらうからわざわざ人間やOCR技術でデータ化しないといけませんが、初めから請求書をデータでやり取りすれば、OCRは不要になります。世の中には請求書をオンラインでやり取りするようなプラットフォームも出回ってきています。将来的にはデジタル化が進みdata to data(紙のようにphysical to dataではなく)が当たり前になってくるはずです。繰り返しになりますが、その世界ではOCRは不要です。

AI insideの株価水準(2021/4/28現在)

2019年の末に上場してから2020年は業績の伸びとともに、株価もすごい勢いで上昇しました。
明日はストップ安まで下落するでしょうね。

出典:株探
出典:株探

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